食品のトビラ

人工甘味料の健康被害は本当にあるのか!?

2023/03/15

人工甘味料の健康被害は本当にあるのか!?

ダイエット食品や低カロリー食品を手にすると、成分表示で目に留まることの多いアスパールテーム、スクラロース、アセチルファムカリウム、(アセスルファムK)などの名前。これらは化学合成により作られた甘味料で、食品衛生法における指定添加物に該当します。

働きとしては砂糖の数百倍の甘味度を持っているため、カロリー低減製品で砂糖の代替甘味料として、清涼飲料やガムなどの製品で使用されています。砂糖の甘味に近づけるため、複数の人工甘味料を併用している場合も少なくありません。

こうした人工甘味料に関しては長きにわたり健康上の安全性に関して、多くの議論と様々な研究が続いています。

人工甘味料でがんのリスクが高まる

そんな中、砂糖の代わりに使用される人工甘味料の摂取量が多い人では、がんのリスクが高まる可能性のあるという新たな研究が2022年に発表されています。フランス国立保健医学研究所(INSERM)のCharlotte Debras氏らによるこの研究の詳細は、「PLOS Medicine」に2022 年 3 24 日に公開されました。

※出典(https://journals.plos.org/plosmedicine/article?id=10.1371/journal.pmed.1003950Debras C, et al.PLoS Med. 2022;19:e1003950.


この研究は、フランス国内で102,865人の成人を対象にしたもので、中央値で7.8年間追跡し、人工甘味料〔アスパルテーム、アセスルファムカリウム(アセスルファムK)、スクラロース〕の摂取量とがんリスクとの関連を検討しています。


その結果、人工甘味料の摂取量が多い人では人工甘味料を摂取していない人と比べると、がんと診断されるリスクが13%高いことがわかりました。人工甘味料の種類別に見ると、アスパルテームで15%、アセスルファムK13%のリスクが上昇していました。がん種別に見ると、乳がんリスクはアスパルテームの摂取量が多い人で22%、大腸がんなどの肥満関連のがんリスクは、全ての人工甘味料の摂取量が多い人で13%、アスパルテームの摂取量が多い人で15%上昇しているとされています。
世界中で多くの食品や飲料に使用されているアスパルテームやアセスルファムkなどの人工甘味料が、がんリスクの上昇に関連していることがわかったとしています。

心血管リスク増と骨格筋量の減少の可能性

また、同氏らは、2009年から行われている別の研究を利用し、人工甘味料の摂取量と心血管疾患リスクの関連を検討し、人工甘味料の摂取量が多い人は、人工甘味料を使用していない人に比べ、心血管疾患のリスクが高かったとの報告もしています。この結果は202297日のBMJ誌電子版に掲載されています。

※出典

Artificial sweeteners and risk of cardiovascular diseases: results from the prospective NutriNet-Sante cohort」(https://www.bmj.com/content/378/bmj-2022-071204

この研究は18歳以上の103388人(79.8%が女性)、追跡期間の中央値は9.0年という大規模なもので、さまざまな食品に含まれる人工甘味料の総摂取量や個々の人工甘味料別(アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロースなど)の摂取量と、あらゆる心血管疾患、冠疾患、脳血管疾患の関係について検討しています。

結果では、人工甘味料の摂取量が多い人は心血管疾患のリスクが高いことが示唆されたと結論しています。人工甘味料の安全性については、現在も欧州食品安全機関やその他の当局による再評価が行われていますが、人工甘味料が砂糖の代替品として健康的で安全とは言えないと指摘しています。

日本でも最近、人工甘味料に関する興味深い研究があります。日本機能性食品医用学会(202212月)で発表された「人工甘味料の骨格筋への作用とアスリートへの影響」では、マウスの実験ながら、アセスルファムKの投与で骨格筋量の減少が認められたとしており、人工甘味料の長期の摂取による身体への影響がいまだ不確かなことが多いとしている。

このほかにも先行する研究として、脳卒中や認知症リスクが高まるという研究や腸内細菌叢が混乱を起こすなどの研究報告もあり、人工甘味料に関する安全性の担保が年々難しくなってきています。

とはいえ、最初に商品化された非栄養性甘味料であるサッカリンは、アメリカ食品医薬品局(FDA)が1977年、ラットにおける発がんリスクの疑いを根拠に禁止を検討しましたが、最終的に人間とラットが異なる方法でサッカリンを代謝するため、この物質による発がんリスクはないとされるという事件もありました。

人工甘味料の長期の摂取による身体への影響がいまだ不確かなことが多いといえますし、科学の進歩で時代時代での真実も変化します。やはり「危うきに近寄らず」が食のリスク管理でもっとも必要なことかもしれません。