「畑の肉 大豆」が本当に良質なタンパク質であるワケ
2023/03/22
病気療養中の方にとって一番に気になるのが十分な栄養の摂取で体力を維持することです。有名な3大栄養素としてはタンパク質、脂質、炭水化物といわれますが、その中でもタンパク質は身体を構成する基本的な栄養素で、筋肉や肌、皮膚、脳、爪、臓器、髪、血液など、体をつくる原料となるものです。また、体の調子を整えるホルモンを調節する働きや、エネルギーの源にもなっています。
タンパク質は、動物性と植物性の2種類に分類できます。肉、魚、卵、乳・乳製品に含まれるタンパク質を「動物性タンパク質」、大豆・大豆製品に含まれるタンパク質を「植物性タンパク質」と分けて呼ぶこともあります。
タンパク質の良し悪しを決めるアミノ酸スコア
そもそもタンパク質はアミノ酸という有機化合物からできています。
ヒトのタンパク質を構成するのは20種類のアミノ酸が様々に組み合わせを作り、種々のタンパク質が作り出されているのです。このうち体内では合成出来ないため食べ物から摂取するほかのないアミノ酸が8種類(幼児は9種類)は「必須アミノ酸」と呼ばれています。この必須アミノ酸がバランスよく含まれているタンパク質ほど「良質なタンパク質」と言われます。
植物性タンパク質を含む食品の代表格である大豆はしばしば「畑の肉」と呼ばれることがありますが、その呼称にはあるタンパク質の指標に関係しています。
タンパク質の良し悪しを評価する指標として「アミノ酸スコア」というものがあります。それぞれの食品で各アミノ酸が基準値に対してどれくらいの割合で(%)含まれているかを示すスコアで、100に達したものが良質なタンパク質ということになります。大豆のアミノ酸スコアは100となっています。つまり、必須アミノ酸がすべて100%含まれ、肉類と同じ良質なタンパク質であるという評価になっています。
体内でタンパク質が合成される際には、そのタンパク質を構成する全てのアミノ酸が必要です。一つでも低い含有量のアミノ酸があると、最も低いアミノ酸に合わせたタンパク質料しか生成できません。ですから必須アミノ酸含有量のバランスの悪い食品やいくつかの必須アミノ酸が少ない食品はタンパク質としての栄養価が下がります。
<各食品のアミノ酸スコア>
大豆 |
100 |
牛肉・豚肉・鶏肉 |
100 |
牛乳・卵 |
100 |
小麦粉 |
38 |
精白米 |
65 |
じゃがいも |
68 |
日本人の食事摂取基準によると、一日に必要なタンパク質は、18~49歳は、摂取エネルギーの13~20%、50~64歳は14~20%、65歳以上は15~20%が理想とされており、推奨量は、18~64歳の男性は一日65g、65歳以上の男性は60g、18歳以上の女性は一日50gとなっています
ではアミノ酸スコア100である動物性タンパク質の肉類と植物性タンパク質の大豆ではどちらを摂取すべきでしょうか?
この植物性タンパク質と動物性タンパク質に関して、「動物性タンパク質」を「植物性タンパク質」に置き換えることで、心血管疾患や2型糖尿病のリスクが減少するという研究があります。野菜や穀物、大豆などの植物性食品を食べることで、寿命を延ばせる可能性があるとする研究です。
植物性タンパク質を増やすメリット
東フィンランド大学の研究では、毎日約5gの動物性タンパク質を植物性タンパク質に置き換えると、糖尿病のリスクが18%減少することが示されました。植物性タンパク質を摂ることで、血糖値が低下するというものです。植物性タンパク質が2型糖尿病のリスク低下と関連しているのに対し、肉がよく食べる食習慣の人はリスクが高いことを発見したとして、British Journal of Nutritionに掲載されました。(出典:https://www.sciencedaily.com/releases/2017/04/170419091654.htm)
また、米国立がん研究所(NCI)が発表した研究では、ふだんの食事に含まれる動物性タンパク質を少し植物性タンパク質に置き換えるだけで、心血管疾患などによる死亡リスクが低下する可能性があるとしています。研究グループは、全米で男性23万7,036人と女性17万9,068人の1995~2011年のデータを解析しています。
食事エネルギー摂取量からみて、動物性タンパク質の3%を植物性タンパク質で置き換えた人は、16年間の追跡期間で全死因による死亡リスクが10%減少し、心血管疾患の死亡リスクも、男性で11%、女性で12%、それぞれ減少した。とくに卵を植物性食品になどに置き換えると、死亡リスクは男性で24%、女性で21%、赤身肉を置き換えた場合では男性で13%、女性で15%、それぞれ低下しています。
https://dceg.cancer.gov/news-events/news/2020/plant-animal-protein-mortality
植物性食品には動物性タンパクにほとんど含まれていない食物繊維があり、生活習慣病に深い関係がある血糖値の上昇を抑制し、さらに腸内細菌叢を改善し、短鎖脂肪酸の生産が増加します。短鎖脂肪酸は、有害な菌の増殖や炎症を抑えるなどの働きをします。
動物性タンパクと植物性タンパクの単なる好みによる選択ではなく、参考にしても良い研究が相当数ありそうです。