食品のトビラ

大豆食品はがんリスクを下げるピラミッドの頂点!?

2023/04/05

大豆食品はがんリスクを下げるピラミッドの頂点!?

 

 

食品とがんの関係はさまざまな研究があり、一つ一つの食品や成分ががんや健康に与える影響、因果関係に一喜一憂してしまいがちです。その一つの答えとして国際的に知られているのが「デザイナーフーズ・ピラミッド」です。

がん予防は野菜や果物を中心とした食事

日本よりも早くからがんの死亡率の増加が顕著になりだしていたアメリカでは、がんと食べものとの因果関係についてもさまざまな調査が行われて、1980年にアメリカ国立がん研究所(NCI)が、一つの方向性として「野菜や果物などを中心とした食事には、がんの予防に効果があるらしい」という報告を出しました。

その後、1990年には、がん予防のために食品成分がどのような機能があるかについての科学的解明を試みた成果として発表したのが「デザイナーフーズ計画」です。この計画では、がん予防に効果があると予測できる約40種類の食品を、効果が期待できる順に上からピラミッド型に並べた「デザイナーフーズ・ピラミッド」という図を公表。その図に基づいて「1日5皿分以上の野菜と、200gの果物を食べよう」という“5 A DAY(ファイブ・ア・デイ)運動”を展開しました。

ピラミッドの頂点に大豆やニンニク、キャベツ、しょうが、、、、

 

大豆はこの「デザイナーフーズ・ピラミッド」の頂点、つまり最もがん予防の効果が期待されるグループに入っています。大豆のほかには、にんにく、キャベツ、しょうが、にんじん、その食品群に続くのが、たまねぎ、かんきつ類、レモン、トマト、ナス、ピーマン、ブロッコリーなどです。アメリカではこの運動が行われたことで野菜の摂取量が増え、がんによる死亡率も減少したといわれています。

予防の効果を生み出すファイトケミカル

では、デザイナーフーズ・ピラミッドにある野菜は、なぜがんを予防する効果があるのでしょうか。そこには「ファイトケミカル」が重要な役割を果たしていると考えられています。フィトケミカルは、ファイト(植物性)、ケミカル(化学成分)、という意味ですが、6大栄養素(糖質、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラル、食物繊維)以外の「非栄養素」と呼ばれる微量成分で、例えば「アントシアニン」「カテキン」「リコピン」など耳にしたことがある成分も、ファイトケミカルに含まれます。

 

野菜、果物、豆類、いも類、海藻などの植物に含まれる成分で、植物自身が紫外線や昆虫など、植物にとって有害なものから体を守るために作りだされた色素や香り、アク、辛味、ネバネバなどの成分のことです。栄養素ではないものの、人間の健康に作用する機能性成分があり、それによってがんの予防ができると期待されています。

ファイトケミカルの中で注目されているポリフェノール、カロテノイド、含硫化物などの成分ですが、大豆に多く含まれるのはポリフェノール系のイソフラボン類で、骨粗しょう症の予防や高コレステロール血症、心疾患、更年期障害の軽減、乳がん、前立腺がんなどの予防効果が期待されている。また、大豆の渋み成分であるサポニンには抗酸化作用の他に、血中の脂質やコレステロールを低下させる効果があるとされています。

こうしたことから大豆はデザイナーフーズピラミッドの中で最もがんの予防効果が高いと期待される食品群の中にいるのです。

 

壮大な計画が残したがん予防の財産

実は、デザイナーフーズ計画は2000万ドルの予算を投じて、がんを予防するための「デザイナーフーズ計画」は役に立つ可能性のあるファイトケミカルを特定し、それを加工食品に加える目的で開始された計画でした。

 

実は、毒物学者ハーバート・ピアソン博士(Herbert Pierson, Ph.D)の主導で開始された「デザイナーフーズ計画」は、がんを予防するために、役に立つ可能性のあるファイトケミカルを特定し、それを強化して加工食品に加えるという壮大な目的で開始された計画ですが、あまりにも予算がかかるために、現在は終了しています。

特定の食べものによってがんが発生するリスクが増大したり、減少したりという報道がメディアで頻発していますが、多くの研究ではメリットとデメリットの相反する研究結果が出る場合が大変多いようで、がんのリスクに対する食べものやサプリメントの影響を明確にすることにはまだまだ研究の余地があります。しかし、「デザイナーフーズ・ピラミッド」は、日々の食事にとって実践できるある程度現実味のある選択の目安です。

ただ、アメリカの食事を前提としており、日本の食事との整合性に若干不満が生じます。欲を言えば、さらに日本でも研究を進め日本式「デザイナーフーズ・ピラミッド」の誕生を期待したいところです。