食品のトビラ

オートファジーの理論を実践する糖尿病専門医の大ベストセラー

2023/05/08

オートファジーの理論を実践する糖尿病専門医の大ベストセラー

「低糖質 大豆めん」の監修医師である青木厚先生のベストセラー『「空腹」こそ最強のクスリ』を紹介します。

青木先生の考えの基本にあるのは、私たちの生活はどんどん豊かになり、一日の生活に必要なカロリー量の1.5倍から2倍近くの食物を摂取していますが、その過剰な食べ物の摂取が様々な弊害を生んでいる、という認識です。

青木先生によると、食べ過ぎが内臓の疲れ、栄養をきちんと吸収できない、老廃物を排出できない免疫力が低下するなどを引き起こします。摂り過ぎた栄養が脂肪組織に蓄えられ、つきすぎた脂肪は血糖値の上昇や高血圧、血栓形成などに結び付き、糖尿病、高脂血症、脳梗塞心筋梗塞などの心疾患、さらにがんなどの原因となるといいます。

さらに状況を悪くしているのが現代人のあまりにも多い糖質の摂取だとも。わが国では多くの人が成人が1日に必要とする糖質以上の糖質を毎日摂取しているのが現状です。

現在日本の糖尿病患者は約1000万人、予備軍を含めると2000万人近くいると言われています。糖尿病になってしまうと全身の血管がダメージを受け網膜症、腎症、心筋梗塞や脳梗塞、認知症、がんといった疾患のリスクが高まります。

ではどうしたらいいのかこの答えの一つがこの本に詰まっています。

16時間の絶食で起動するオートファジー

青木先生の主張を端的に言うと「ものを食べない時間(空腹の時間)を作る」ということになります。少し唐突ですがこの考え方は、世界的に注目されているオートファジーの理論をもとにしています。

「空腹の時間を作ると、まず内臓がしっかりと休むことができ、血糖値も徐々に下がります。また、最後にものを食べてから10時間ほどたつと、肝臓に蓄えられた糖がなくなるため、脂肪が分解されエネルギーとして使われるようになり、16時間を超えると、体に備わっている『オートファジー』という仕組みが働くようになります」「オートファジーとは、『細胞内の古くなったタンパク質が、新しく作り替えられる』というもので、細胞が飢餓状態や低酸素状態に陥ると、活発化すると言われています」(青木先生)。

 オートファジーという現象を解明したのは、日本の細胞生物学者である大隅良典氏で、その功績が認められ、2016年にはニューロン生理学・医学賞を受賞しました。その後もがんや神経変性疾患などの治療法開発にも大きな影響を与え、現在も各国で様々な研究が続く先端分野です。

 青木先生の提唱する「ものを食べない時間を作る」ことによって生み出される“空腹力”の効果は次のようにまとめることができます。

 ・内臓の疲れが取れて内蔵機能が高まり、免疫力もアップする。

・血糖値が下がり、インスリンの適切な分泌が促され血管障害が改善される

・脂肪が分解され、肥満が引き起こす様々な問題が改善される

・細胞が生まれかわり、体の不調や老化の進行が改善される

 

睡眠時間と合わせれば意外と簡単な空腹時間

 では実際どのような方法でどれだけの空腹時間を生み出さなければならないのか。

「オートファジーを働かせるためには、連続して16時間以上の空腹の時間が必要ですが、睡眠時間を組み込めば、無理なく実行することができるでしょう。できれば毎日続けていただくのが理想ですが、週1回、週末だけ実行していただくだけでも、リセット効果は得られるはずです」(青木先生)

 先生は自ら実践しているタイムスケジュールを紹介しています。

【平日】朝7時に起床し、軽めの朝食をとり(ゆで卵一つと生野菜程度)、夜21時ごろ普通に夕食を取るその間はものを食べない。おなかが空いて仕事に支障をきたしそうな場合は、ナッツ類を食べる。

【休日(土日のどちらか1日)】起きた後、朝食や昼食は食べず、夕食のみ食べる。

 つまり、平日は1416時間。休日は24時間の空腹の時間を作り体をリセットさせているといいます。

 本書で一般の方にわかりやすい空腹時間の作り方として提唱しているのは、「睡眠8時間+空腹の時間8時間」での16時を空腹の時間とする方法。睡眠の前後に空腹の時間を4時間ずつ振り分けても大丈夫。水分の摂取は問題ないと言います。

成長ホルモンの分泌で老化防止にも

オートファジー理論による「空腹力」はさまざまな体の代謝をリセットしますが、老化の抑制にもなるという指摘も興味深いものがあります。

 青木先生によれば「一般的に、40歳前後の人の成長ホルモンの分泌量は、20歳前後の人の5割程度であり、それが老化の一つの原因ともなっています。ところが、空腹状態や低血糖状態を作ると、成長ホルモンの分泌が促進されるのです」とのこと。

「空腹力」は新しいアンチエイジングの手法とも考えられるかもしれません。

 これまで断食の勧めやファスティングの効果を謳う多くの書籍がありましたが、本書はオートファジーという最新の知見と理論をベースに、自らの実践方法まで紹介した非常に説得力のある新しい切り口の健康管理本であると言えます。その説得力で40万部超という大ベストセラーになっています。