医療のトビラ

余分な糖とタンパク質が結びつく「糖化」は万病のもと

2023/03/18

余分な糖とタンパク質が結びつく「糖化」は万病のもと

糖質制限食について注目されていく過程で多くのエビデンスが積み上げられ、糖質が体に与える機序についても明らかになってきました。

糖質が体に与える影響で最も注目されているのが「糖化」と呼ばれる現象です。糖化は現在アンチエイジング医療の中で、最も注目されるキーワードの一つです。

ブドウ糖はパンやごはんなどの炭水化物が消化酵素によって分解されたもので、これが脳や筋肉を動かす主なエネルギー源となっています。しかし、エネルギーとして消費されずに余ってしまったブドウ糖は、まず備蓄用として肝臓や脂肪細胞などに貯えられ、それでもなお余った分は体内のたんぱく質と結びついてタンパク質が変性、劣化してAGEs(蛋白糖化最終生成物)という劣化したタンパク質のなれの果ての老化物質が生成されます。この反応が糖化です。

この老化物質であるAGEsは分解されにくく、体内に蓄積すると肌のシワやくすみ、シミなどとなって現れや髪、骨では全身の老化を進行させ、さらに体調不良や糖尿病、高血圧、がんなどのさまざまな疾患へとつながります。

 

糖化が血管や内臓に影響を与えると、もっと深刻です。血管の組織が糖化によってもろくなると血管壁に炎症が起こりやすくなってしまい、動脈硬化となるリスクが高まります。当然動脈硬化が進行すると、心筋梗塞や脳梗塞などの心配が出てきてしまうのです。

さらに目ではドライアイや白内障、網膜症なども、糖化が原因で引き起こされると言われています。アルツハイマー病との関連も指摘されています。このように、糖化は「老化」と「病気」の大きな原因となってしまうのです。

体の糖化を防ぐためにどんなことができるか?

 それではどうすればいいか。体に摂りこむ糖質を少なくするという極めて当たり前の方法が最善かつ最大の効果を生む方法となります。それが糖質制限食です。

世界中でこれまで様々な食事療法の比較試験が行われていますが、糖質制限食、脂質制限&エネルギー制限食、菜食主義食などの比較では糖質制限食が体重変化や脂質・血圧の改善で最も良い効果を上げています。また、糖質制限食、地中海食、脂質制限食の3つの比較でも糖質制限食が体重減量、脂質、炎症、HbA1cなどで最も良い効果を上げているのです。

こうした比較試験が世界各国で実施されるたびにデータが蓄積され、糖質制限食は血糖、脂質、体重、血圧、炎症反応に対して効果的な結果や改善をもたらし、糖尿病、がん、心臓病、乳がん、そのたもろもろの疾患では、糖質を抑えた群との押さえない群との比較では糖質を抑えたほうが改善率が高くなっているのです。

AGEsと糖尿病はどんな関係になるのか?

体内でのAGEsを考えてみると、糖尿病ではインスリンの働きが低下し「血糖値」は上昇します。体内に糖がたくさんある、すなわち、血糖値が高ければ高いほどブドウ糖はタンパク質に多く引っ付くことになり、AGEsは多くできあがります。

さらに血糖値が高い時間が長ければ長いほどAGEsは多く作られてしまいます。糖尿病は一定期間以上持続的に血糖値が高くなった状態です。つまりAGEsの量は「どれだけ高い血糖値にどれだけ長時間さらされたか」により決まってきます。

糖尿病でコントロールが悪い状態が長く続くほどAGEsの量は増えます。その糖尿病の人は、まさに「AGEsが多く溜まった人」ということができます。

ちなみに血液も糖化します。酸素を運ぶ働きのあるヘモグロビンというたんぱく質が血液中のブドウ糖と結びついて糖化ヘモグロビンとなる現象が1968年に発見されました。糖尿病の検査で薬使われる「ヘモグロビンA1C」とは、この糖化したヘモグロビンの数値にほかなりません。

ヒトの老化やあらゆる疾患の原因は大きく分けると紫外線を浴び過ぎたり、過度のストレスを受け続けることで過剰な酸化物が発生し、それによって体が酸化反応する「体がさびる」現象と、余分な糖分によって引き起こされる糖化反応「体がこげる」現象の二つです。原因は別々ですが、どちらも異常な老化、つまり病気への近道になります。とりあえず糖化の予防のためには今すぐできることは食事による糖質の取り過ぎを控えることです。