急増する高齢者がん患者に対する課題が山積みのまま
2023/08/18
Youtubeの「がん情報チャンネル・外科医 佐藤のりひろ」(https://www.youtube.com/@norihiro_sato 登録者数11.6万人、8月18日現在)で有名な、佐藤典宏先生は、長年がん専門医として患者さんと向き合ってきた臨床医。
「この10年は高齢のがん患者さんが、急増していることを肌で感じます」、「今は70~80代の患者さんが大部分占めます。中には90歳以上のがん患者さんもいらっしゃいます」と説明。
ところが、高齢のがん患者さんが増え続けているにもかかわらずその特徴や問題点を明らかにする研究や議論が少ないとしています。
「この専門分野は老年腫瘍学と呼ばれていますが、取り組む医師や研究者もいまだに不足しており、結果として高齢者のがんについて提供される医療やケアは決して満足のいくものではありません。同時に『高齢者ががんになったらどうすべきか』という患者さん向けの指針や情報もありません」と佐藤先生は語ります。
こうした状況に対して『がんの壁 60代、70代、80代で乗り越える』(飛鳥新社)が上梓されたのです。
高齢者のがん患者さんにとって克服すべき、乗り越えるべき課題を「壁」という言葉に集約させ、想定される問題点を「告知の壁」、「治療の壁」、「食事・運動・心の壁」、「終活の壁」という4つの章に分けることでわかりやすく整理し、それぞれについて最新の医療技術や日常的なケアやその基準などを説明してくれています。
とかく高齢だからというだけで治療をあきらめることに対しては「ナンセンス」であるとし、「治療が可能かどうかを判断するのは暦年齢ではなく『体の状態が治療に耐えられるか』が重要」だと言います。
また「高齢者のがんは、若い人のがんに比べて進行が遅いから、放っておいても何年かは大丈夫」という常識は間違いであり、さらに高齢者は、様々な持病を複数抱えていたり、多剤服用で副作用や誤飲、飲み忘れなどが起こる「ポリファーマシー」の状態にある方も少なくないこと、身体・認知機能が低下していること。独居など社会的・経済的に制限があるなどの特徴があり、そうした問題を考慮しながら治療やケアを考えていかなければならないとしています。
ではなぜ高齢者のがん患者さんが増えているのでしょうか? 主な理由として次の3つを上げています。①細胞の複製エラーの増加やエピゲノムの調整不良などで起こる遺伝子異常が増加すること②免疫の弱体化③老化細胞による発がん促進作用。
つまり、がんとはある意味「避けられない老化現象」ととらえることもできます。しかし、避けられないからと言ってあきらめるのではなく、高齢でがんを発症したら、慌てずしっかりと「よりよい治療を選ぶために自分でもがんの正しい情報を集めることが重要」と佐藤先生は指摘します。
高齢者のがん治療の特徴を理解し、高齢者に適した治療法を選択することは、医療者だけではなく、患者自身にも必要な姿勢だといえるのではないでしょうか。
※佐藤典宏先生が「低糖質大豆めん」を取り上げてくれました。