大豆こそ元祖スーパーフードだと言えるわけ
2023/06/29
大豆が健康にどれだけいい影響を及ぼすかは、すでに多くの研究がありますし、もともと日本人も大豆を食生活に積極的に取り入れてきた結果、世界に冠たる長寿国になったともいわれています。
世界の長寿地域で共通して食べられている大豆は、ほとんどの生活習慣病や糖尿病、がんなどの予防が期待できることや、高血圧や高脂血症、更年期障害、骨粗しょう症、などの症状を抑える効果があるといわれています。さらには認知症の予防の可能性まで指摘されています。
例えば大豆を食べている地域の女性は閉経以降も血圧やコレステロールが低く抑えられていることがわかりました。イソフラボンが更年期の症状を和らげていることが実際に確認されたのです。
(出典:https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/308.html)
国立がん研究センターでは40~69歳でがん、循環器疾患になっていなかった約9万人を追跡した調査結果にもとづいて、大豆食品、発酵性大豆食品摂取量とその後の死亡リスクとの関連を調べた結果、発酵性大豆食品の摂取量が多いと死亡のリスクが下がるという関連が明らかになりました。また、納豆の摂取量が多いほど循環器疾患死亡リスクが低いという関連を認めました。大豆にはたんぱく質や食物繊維、ミネラル、イソフラボンといった様々な成分が含まれ、血圧・体重・血中脂質などに良い効果を及ぼすことが先行研究から報告されています。特に、発酵性大豆食品は加工の過程で成分の消失が少ないことなどが、明らかな関連を認めた理由の一つとして考えられるということです。
(出典:https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/8438.html)
大豆のがんに対する予防効果や腫瘍縮小効果についてはさまざまな研究があり、一概には言えませんが、大豆をよく食べる地域と食べない地域では全がんの死亡率に大きな開きがあります。
イソフラボンの健康増進効果
大豆に含まれる栄養機能成分として最も有名なのが、イソフラボンです。イソフラボンはフラボノイドの一種で、女性ホルモンに似た働きをするといわれています。
イソフラボンの摂取で「骨粗しょう症」も防げることがわかっています。ハワイに移住した高齢女性の尿で、骨密度の低い人と高い人を比べたところ、骨密度の高い人は尿中にイソフラボンが多く出ていたという報告があります。
さらにはイソフラボンと心筋梗塞における死亡率の関係を調べた研究では、イソフラボンの摂取量が多ければ多いほど、心筋梗塞による死亡率が低く、イソフラボン摂取量の少ないところでは死亡率が高くなっていたのです。
(出典:https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/308.html)
中高年の男性にも大豆食品はお勧め
主に女性ホルモンの代用として語られるイソフラボンの効果は男性ではどうなのか。国立がん研究センターの調査が約4万3,000人を対象とした調査では、大豆をよく食べている61歳以上の男性では、摂取量がもっとも多いグループで、もっとも少ないグループと比べ、前立腺がんの発症が半分に減るという結果が出ています。
(https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/8514.html)
男性の前立腺では、治療の必要がない微少ながんが加齢とともに増加することが知られています。日本人でもがんに進行して臨床的に発見される例が増えていますが、欧米人に比べると少ない。「大豆を日常的に食べる」食生活が定着しているからではないかと指摘されています。
このほかにも大豆の健康成分は多くあります。
タンパク質では、大豆は「畑の肉」といわれるように豆類の中でもタンパク質の含有量が多く、しかもアミノ酸の質が極めて高く、動物性タンパクにまったく引けを取らないのです。関連記事:『「畑の肉 大豆」が本当に良質なタンパク質であるワケ』脂質を見てみると、大豆には体に良い一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸が含まれる。食品の脂肪分をバランス良く調整できると言えます。
さらに食物繊維が豊富であることも大きな特徴です。大豆といえばタンパク質やイソフラボンなどが注目されることが多く、食物繊維が多いという印象は薄いかもしれないですが、大豆に含まれる食物繊維は、きのこ類や野菜類に比べても多くなっています。
カナダのセントミカエル病院研究所のラッセル デ ソウザ博士らは、大豆などの豆類の摂取について調査した21件の研究を解析した。その結果、豆類を1日あたり130g食べていると、0.34kgの減量につながり、減量後のリバウンドも少ないことが明らかになっています。
これ以外にも、食物繊維、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、リン、ビタミンE、ビタミンB1、葉酸など、多種多様な栄養素が含まれていることも見逃せません。さらには悪玉コレステロールを低下してくれる大豆レシチン、抗酸化作用を持つ大豆サポニンといった成分も豊富に含まれています。
次第に減少しつつある大豆食の習慣
国連食糧農業機関(FAO)は、2016年を「国際豆年」に定め、体に良い大豆などの豆類を食べることを奨励しています。日本でも2000年からスタートした「21世紀における国民健康づくり運動」の具体的な計画である「健康日本21では、豆類摂取の目標値を「1日100g以上」としています。
しかし、実際の摂取量は、この目標値を大幅に下回っているのが現状です。平均で59.4g※、1人あたりの1日の摂取量を年代別にみてみると、50代、60代では平均量より多く摂っていますが、40代以下になると男女ともに急激に摂取量が減少しています。(※出典:厚生労働省 平成26年国民健康・栄養調査)
大豆食品の健康機能は、様々な研究がすすむにつれ次々と明らかになってきています。スーパーフードといえる大豆食をもう一度冷静に見直し、日々の食事に取り入れてみてはいかがでしょうか。